ボット(bot)と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? セキュリティに関心のある人だったら、コンピュータを外部から不正にコントロールするコンピュータウイルスの一種である悪質なプログラム、またはそのプログラムに感染したコンピュータを指す「ボット」を思い浮かべるでしょう。ボットはロボット(robot)の略で、サーチエンジンがデータベース作成のためにウェブサイトのデータを自動的に収集するプログラムもボットと呼ばれています。
セカンドライフにもボットが存在します。通常、アバターはユーザーがキーボードやマウスで直接、操作していますが、なかにはスクリプトでコントロールされているアバターもいます。それがセカンドライフのボットです。
その主な目的は当初、小遣い稼ぎでした。セカンドライフの小遣い稼ぎにキャンプがありますが、アバター1人で稼げる小遣いは高が知れています。でも、アバターが2人、3人と増えれば、稼げる小遣いも2倍、3倍になる。そこで、アカウントをいくつも作ってキャンプに出かけ、たっぷり小遣い稼ぎをしようというわけです。そこで使われるのがボットです。
ひとつの場所に設置できるキャンピングチェアには、数に限りがあります。それを1人でいくつも占領するのですから、迷惑な話です。1年ほど前に楽器屋さん巡りをしていたとき、ある大きな楽器屋さんの片隅でボットが売られているのを見たことがあります。店の一番奥のさらについ立ての陰という、とても分かりづらい場所です。
ボットの値段はなんと2,500L$! そんなに高いお金を払い、はたして元が取れるんだろうか? と、不思議に思ったのをいまでも覚えています。後日、その楽器屋さんに行ってみたところ、すでにボットは見当たりませんでした。売っていた本人も、ボットが堂々と売っていいものだとは思っていなかったということでしょうか。
これまで主に個人ユーザーの小遣い稼ぎの道具に使われていたボットですが、最近、その用途が変わりつつあるようです。今、積極的にボットを利用しているのは、店やショッピングモールが設置したキャンピングチェアを利用する客(?)ではなく、店やショッピングモールのオーナーだというのです。
地図を見て、アバターを表す緑の点が多いところに行ってみることがよくあります。人は、人がいるところに集まるーー。それは、現実の世界もセカンドライフも変わりません。また、セカンドライフの検索では、交通量が多いほど検索結果の上位にランクされます。そこで店やモール、SIMのオーナーは、人を集め検索結果がより上位にくるよう、さまざまな手を尽くすわけです。
その手段のひとつがキャンプの設置です。しかし、報酬が発生するキャンプには、それなりに費用がかかる。なんとか費用をかけずに、アバターを集められないものか? そこでボットの登場です。コンピュータウイルスのようなボットと違って、セカンドライフのボットに直接的な害はありません。第三者に費用を払っているかいないかの違いはあるものの、キャンプもボットも集客のためのサクラであることに変わりはありません。
ショップやSIMのオーナーもいろいろ考えるもんだ、と最初はその程度にしか考えていませんでした。が、Wagner James AuさんのブログNew World Notesを読んで、複雑な気持ちになりました。そのエントリーのタイトルはーー。
Bot Carnival: 10-15% Of Second Life User Activity Is Actually Bot-Oriented
日本語に訳すと、
ボットカーニバル:ユーザーのセカンドライフ滞在時間の10〜15%は、実はボットによるものだった
メインランドのショッピングモール。このとき広場には25人のアバターがいた。このなかの数名はボットである可能性が高い。
New World Notesによれば、10〜15%という数値はリンデンラボ社のCFOが公式ウェブサイト内のフォーラムで発言したものだそうです。リンデンラボ社が毎月、発表する統計データのなかにユーザ—のセカンドライフ滞在時間があり、今年8月の全ユーザ—の滞在時間は3,480万時間と発表されています。その滞在時間の10〜15%、つまり約350万〜520万時間はボットによるものだということになります。
それが事実だとすれば、大変なことです。Wagnerさんも、New World Notesに「これは、私が想像していたよりもかなり大きな数値だ」と書いています。ボットは直接的な被害を及ぼさないとはいえ、通常のアバターと同じように、セカンドライフのサーバーやネットワークのリソースを消費します。裏を返せば、この10〜15%がなくなれば、処理の遅延が多少なりとも軽減される可能性があるということになります。
先週木曜日に東京・渋谷にあるBarTubeに行ったときにも、ボットに関する興味深い話を聞きました。その方が管理するSIM周辺を地図で見ていたら、近くに緑の点が密集しているSIMがあった。アバター数は100名近かったそうです。いったい何をやっているんだろうと行ってみたところ、そこにいたのは同じ顔、同じ姿のアバターばかり。おまけにすべてのアバターには、Abc001 Xyzのように番号が振られた同じ名前が付けられていたそうです。何かのパフォーマンスなのか、集客目当てか目的はわからないが、不気味でさえあった、とその方はおっしゃっていました。
まだそれほど大量のボットが同じ場所にいるのを見たことはありませんが、店番をしていたり、商品のモデルをしているボットを見かけることはあります。これらは、ショップオーナーの知恵といってもよいでしょう。また、Second Timesによれば、ボットが人工知能の研究に利用されている例もあるそうです。
すべてのボットを一概に否定できないところが難しいところですが、滞在時間の10〜15%をボットが占めるというのは決して尋常ではありません。だって、キャンプ中に話しかけた相手がボットだったなんて、虚しすぎるじゃないですか。
2 件のコメント:
私もNetBook、買っちゃいました!
羨まし〜い。
もうどこでもSL!
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